二月二十三日

   饅頭に化けて来なよと文が来る

              (安永八年)





 逢いたい一心で大胆にも大型の蒸籠(せいろう)のなかに身をひそめ、大奥にしのび入つた男がある。役者生島新五郎、相手は大奥の年寄女中の絵島。
 徳川七代将軍家継時代、恋はまかりならぬときついおしかり。新五郎は三宅島へ流され絵島は上伊那郡高遠藩主内藤駿河守にお預けとなり、一汁一菜というきびしい生活。深く身をつつしみ、信仰にあつく、この地にいること二十八年、六十一歳でままならぬ恋の思い出を閉じた。