二月二十一日

   信濃者につこりとして喰ひかかり

            (柳多留 一一)




 落語に「米つきの幽霊」というのがある。信濃からけなげにも働きに出かけた男、定評通りなかなか食いつぷりがいい。胃腸をこわし医者にかかるほどになつても、おハチの底を鳴らしたがる。とうとう病勢が進んであえなく世を去つたが、幽霊になつても台所へあらわれる。そんなうわさがあつて、とかく世間の口はうるさい。またあらわれたので「ヤイ、てめえは死んでまでも飯を食うのか」「ナーニおれは、しなぬ(信濃)者でございます」