二月十九日

   まくり手の論も学びの力わざ

              (柳の丈競)




 歴史小説について大岡昇平井上靖が大いに論争、ジヤーナリズムをわき立たせた。
 昔、これに似たいい例がある。焦点は「まくり手」。口火をきつたのは良暹法師、相手は津守国基。歌論だ。まくり手などという用語はないと痛烈につく説に受けて立つた国基は「風越の峰よりおりるしづがをが木曽の麻衣まくり手をして」の古歌をあげ、ついに法師をギヤフンとさせた。麻衣は木曽山中の人たちの常着だつた。