二月十八日

   風味よく甘し塩尻越えし酒

           (出所不明)




 信州の清酒は天下に響いて、現に東京にもこれを看板にした酒場がたくさんあり、大いにはやつている。この句は、中仙道を経て江戸に運ばれてゆく上方の酒をよんでいるが、いまいましいと思う人もあるだろう。信州にもうまい酒があるのに、むかしは塩尻峠を越えてゆくよその商品を素通りにさせるに過ぎなかつた。
 眼下に諏訪湖をながめ、はるか富士山の姿が見え、表日本と裏日本との分水界をなし、一方は諏訪湖に入つて天龍川、一方は犀川につづき千曲川信濃川となつている。