二月十六日

   雲雀毛も月毛も雲に昇る駒

            (柳多留一一〇)





 伝説「望月の駒」は姫と駒にまつわる悲しくも奇しき物語だ。戦国時代、望月の城主に美しい姫があつた。姫と誕生日が同じ月毛の駒も城主にとつては可愛くてならなかつた。駒は姫を慕つた。そこで城主は「約束の時間までに山を三周せよ、それが出来たらお前にやろう」と駒に命じる。しかし三周の終らぬうちにわざと鐘を鳴らし、このため駒は息絶えたという。
 蓼科山の裾野御牧ヶ原(北佐久郡望月町本牧)あたりは、むかし望月の牧といわれ、朝廷に献上する馬の名産地であつた。