二月七日

   布奪ふ牛に老婆の角は折れ

           (佃住吉社奉額)





 「牛に引かれて善光寺」の伝説はすでに名高い。小諸市川辺に布引観音堂、名を釈尊寺という一寺がある。奇岩怪石の巌頭にそそり立つ観音堂の由来縁起がそれである。
 牛を追つかけた無信心な婆さんが善光寺にはいり、御仏の光にひざまづいて念仏、生れ変つたようになつて家へ帰る。そして近くの布引観音にわびに行くと牛にさらわれた布がちやんとあつた。以来信心厚い人になつたという。この句の角は、牛と頑固な婆さんの両方を指している。