一月二十九日

   猫を追ひ出して信濃は焚きつける

              (安永四年)





 長野県人は負けずぎらいだという定評である。だから何でも日本一を数えあげたがるようだ。それに理屈つぽいということもあげられる。信州の冬は長く、きびしい。その間、読書をする。理論をたたかわす。いいにつけ悪いにつけ、炬燵文化は栄える。独立自尊の気概はまことにたのもしいが、そのうらを返せば、郷党の団結に欠けるという妙な性格もある。
 この句、むかし江戸へ働きにいつて大いに重宝がられたひとりの信州人をえがいている。