一月二十五日


   薄雲高尾美女の名剣

          (俳諧ケイ二〇)




 埴科郡坂城町南条の鼠宿出身に名妓薄雲と凶賊児雷也がある。
 嬌名を謳われた薄雲は元禄年中にこの世を去つたが、その遺物は郷里である龍田山耕雲寺に打敷になつて保存され、山東京伝の「骨董集」に紹介されているほど名高い。
 仙台高尾が吉原を出るとき、妹妓薄雲に形見として与えたという禰襠があつたが、のち薄雲の生家から負債の代償として赤池家に贈られたのに再び赤池家から隣村の佐藤家に婚姻するとき、この禰襠を持つて行つた。佐藤家では模様のなかから或る部分を切取つて家に残し、残りを打敷に縫い直して菩提寺に納めたのである。