一月五日


   剽軽な信濃は獅子の足に住み

          (万句合安永元、松四)




 太神楽の獅子舞の後足に雇われて、町中を門付して歩いていた信濃者。飯焚き、薪割りが出稼ぎの職場の通例なのに、獅子舞の後足とはまことにヒヨウキンものだ。愛すべき信州人である。
     宝船
 信濃者の飯焚、宝船を持つて来て「もし旦那さん之は何でござります」旦那「それは宝船といつて今夜枕の下へ敷いて寝るとよい夢を見る、さうすると今年は仕合せが良いといつてみんな敷いて寝る」と聞いて、やがて枕の下に入れて寝て、あくる朝起きて「もし旦那様、夕べ敷いて寝ましたが夢も何も見ませぬ、どうしたつて御座りませう」旦那「それは不思議な、夢を見ぬ筈はないが大方獏でも食つたろう」といへば、信濃者「いい、こつちらえは参じましてから米の飯ばかり」(安永九年刊 福三笑)