一月三日


   雪国は御慶も破風へ申入れ

          (万句合宝暦八・鶴一)




 新しい年を迎えた喜びの挨拶をするとき、雪深い信濃では玄関ではとても出来そうもないと大袈裟に想像した句。
 松本地方では新春の神棚に供える神酒どつくりに「おみちのくち」を挿し込んで飾る。長さ三十センチ、幅一・五センチぐらいの竹を一ミリの三分の一ぐらいの厚さに薄くさいてヒゴをつくる。このヒゴをつくる。このヒゴを曲げて、あめでたい宝船や三階松、宝珠型などをかたどる。この竹のさき方がむずかしく、松本で作られたものは特に技術がすぐれ、洗練された美しさで知られていた。
 江戸時代から明治の中ごろまでは製作者がこぞつてその技を競い合い、販路も遠く県外に及んだ。江戸時代には松本藩が殖産の一つとして奨励したものだという。