一月二日


   みじかくながく手まくらのゆめ

             (田舎樽)



 うたた寝の手まくらの夢は短かくもあるがまた手枕の割りに長かつたと感じたのである。それは人生にも似た感懐であろう。
 夢といえば初夢がある。正月二日の夜、宝船の湯の絵を買つて枕の下へ入れて吉夢を願う。夢の中で天狗の羽団扇を借りて宇頂天。手がくるつて下界へ真逆様。落ちたところは海でなくほんものの宝船。弁天様のお酌でいい機嫌の最中で起されてこの話をしながら煙草をのむ。「その船に七福神が揃つていたのに、お前さんが教えてあげたのは六福じやないか」「ウム、あと一ぷくは今のんじまつた」。正月向きの陽気な落語「羽団扇」から。
 「田舎樽」は文化のころ松本で発行された句集。