十月

▽自分の句を批評して貰うことを待っている人はいる。忌憚なくやって下さると句の励みになるから当たらず触らずどっちつかずではなしに、ズバリ突き放して見て呉れると有り難い、その飾らない態度は好感を持てるので、個人的に提言苦言を差し上げる。
▽本誌では前に「道」という表題で合評を連載した。批評する者も勉強になるし慎重に取り組み、批評された作者からは率直な反響が来て、そこに交遊の道がおのずとできた。
▽合評の名を付していいか、どうか、柳多留三篇輪講が本号で無事終った。長い間尽くされたお努力のほどに対し心から御礼を申し上げると共に敬意を表したい。江戸時代の句ということで句主はこれを読むことはできないが、作品そのものの資質、主張は勿論、背景として時代の風俗、言語、慣習などを解き明かす。表現方法とか、何をねらった句だとかの追究もあって、現代川柳作家への寄与も尠しとしない。
▽古典としての重みから来る解説考証によって、博雅の諸書狩猟の知識が披露され、おのずと古川柳学の対象をかたちづける。たしかにこの道は地味で、そして遠い。
▽初篇から三篇までの輪講者が終始いささかも移動なかったというわけではない。二十年間のうちだから去っていった人はある。富士野鞍馬さん、山路閑古さんはお逝くなりになった。みなさんは志して長く席を同じうしたかったのに、途中で抜けられていったけれど、居残った人たちがそれを引き継ぎ、三篇まで漕ぎつけて下さった、どうかお見届け下さいと御霊前にご報告したい。
▽比企蝉人さんは脱退したひとりだが、全然交渉が絶えたのではなく、その後ひょっこり拙宅まで訪ねてくれ、松本風物探勝だよとおっしゃりブラつかれた。先年句集「他面体」の印刷も頼まれた。
▽暫く輪講に加わって戴いたことのある鈴木倉之助さんと縁あっての、柳多留廿七篇輪講が来月号から先ず礎稿で開講する。共述者も先蹤の意をよく弁えた面々、気迫充分と見た。されば安んじられよ。