十二月十日


   小さな石が重氏の道の邪魔

             (柳の丈競)


 長野市石堂町の刈萱山寂照院西光寺は芝居や琵琶歌で子女の紅涙をしぼらせる刈萱上人の等阿法師が開基し、その子の石童丸が後を継いだお寺であつて刈萱堂と呼ばれ、土地の字の石堂も石童丸に因んだものと言われる。
 高野山にいると風の便りに聞いた石童丸が父を尋ねるが、名乗らぬままに父子とも仏門に入る。いかにも親子の情禁じ難く、等阿上人だけひとり善光寺の地にのがれてゆく。
 父の入寂と同じ日に夢を見た石童丸の道念ははじめて父であつたことを知り、急ぎ善光寺に来て冥福を祈り、父の地蔵尊に並べて、自分も亦一体の地蔵尊を刻んだ。親子地蔵尊の哀れにもいたいたしい由来である。