十一月二十九日


   信州のゆき大阪で水になり

          (柳多留 六四)



 膚寒い静かな夜には「十三里半」のシヤレで利かした辻行燈のやき芋が恋しいきようこの頃。やき芋でオチる落語に「真田小僧」がある。
 いつもねだつてはうまい具合いに小使い銭をせしめている利口過ぎる子供が、父親の話している真田三代記を、ものかげで立ち聞きし、それをそのまま講釈し驚かせ、真田家紋の六文銭にこと寄せてうまうま銭をかき集めて逃げゆく。「どこへ行くのだ」「ウン今度は焼芋を買つて来る」「うちの真田もさつまへ落ちたか」。大阪落城に討死と見せかけ薩摩へ落ちたという説をかまえて聞く噺だ。