十月三日

   木曽殿は勝関牛は皆火傷

         (新編柳多留 三八)



 寿永二年(一一八三)平維盛を将とする平家の大軍が京都から押し寄せたとき、木曽義仲は北陸の倶利伽羅谷に於て牛の角に松明を縛りつけての奇襲作戦で見事に撃破した。
 松明といえば長野県東筑摩郡本郷村の浅間温泉では十月三日、火祭りが威勢よく行われる。長さ三メートル、太さ四斗樽ほどのタイマツを炎々と燃えあがらせ、かついだり、ころがしたりして温泉町を練り歩く。この村にある農作物を守護する御射山神社の神様が浅間の春宮から三才山の秋宮へ、このタイマツの煙りに乗つてお帰りになる神事。また、稲作のとき、害虫を退治するために火を焚いた名残りとも言われる。