八月二日

   虫へんに文(ぶん)ともいはぬ木曽の夏

               (柳多留一二八)



 全く暑い。毎日がうだるような暑さだ。長いトンネルをあえいで汽車がのぼる。むせかえるほどの煤煙に、機関車に乗つている人たちの苦労がわかるというもの。朝からしつとり汗がにじみ出る。やきつくような太陽にうなだれた向日葵の首。息苦しい犬の長い舌。ビルとビルとが背くらべ。暑い。昼の月が忘れられている。
 この句、さすがに木曽では涼しく、蚊の出ない別天地。蚊という字を分解したおかしみ。