七月三十一日

   戻り馬茶やのけぶりとなりにける

               (田舎樽)




 客を乗せて用が済んだ帰り道、戻り馬でぶらりぶらりと行く姿が、茶屋からあがる煙と一しよに見えなくなつたというもの。昔の街道のおもかげが目に浮かぶようだ。
 馬といえば俳人芭蕉の貞享五年(一六八八)の著「更科紀行」がある。この中の猿ケ馬場峠を行くくだりに、連れの者は馬上にあつて居眠りを続けてはらはらするところが出てくる。この峠は東筑摩郡麻績村にあり、このあたり第二の軽井沢として別荘がいくつも建てられている。松本で発行の句集より。