七月二十八日

   針箱の謎湯女と解く下の諏訪

           (柳多留 七二)




 むかし宿場として繁盛をきわめたところには旅情を慰める脂粉のおんなが艷を競つた。
 下諏訪町は湯の街であり、甲州街道と中仙道の交叉点にあつて旅人の往還もはげしく、いきおいサービスガールが妖しい流し目を呉れた。
   諏訪の神まします故か我々も
     湯女を見るより柱立てする
 十返舎一九が豪快な恣意を狂歌に托している。パンパンという街娼の名が戦後はやつたが、この下諏訪では当時「針箱」の名で珍しがられ、いざないの灯がほの明るくゆれた。