七月三日

   犀の飛ぶ下石の間を人の波

         (柳多留 一四八)




 犀川は源を駒ケ岳に発する奈良井川梓川の合流した川だ。だんだん北流して穂高川高瀬川を呑み、東北に千曲川を合して信濃川となる。この川の流域は南北安曇、東筑摩郡の三郡にわたり一大平野をなし松本平と呼ばれる。伝説によると大昔、一大湖水であつて泉小太郎が犀にまたがつて山を突破り、湖水を北海に落したという。出水はあつたろうがと湖水説を否定する意見もある。
 この句、謡曲「犀」に取材し、源頼朝が和泉小次郎に命じ、犀川の犀を退治するミセドコロ。