六月二十日


   哀れさはべろん〱の物語り

                (柳多留 四二)




 平家物語信濃前司行長が作つて生仏という盲僧に教えて語らせたものである。いわゆる琵琶法師の語り物として行われた。軍紀物の最大傑作として庶民的な文学性というものをまともに触れ得ることであるが、それは語り物である点、そうした性格を具えた宿命的な匂いを否定することは出来ないのである。平家一門の興亡のあとを流麗にして哀調を帯びた文体に多くの共感を抱かしめる魅力は大きい。