五月二十三日

   諏訪の温泉の香の残る手拭

           (俳諧ケイ 二二)



 諏訪湖をめぐつて諏訪市岡谷市下諏訪町がある。諏訪市は城下町、岡谷市は製糸工場の新興都市、下諏訪町は湯の町の印象。
 下諏訪町は今でこそ上諏訪温泉より湧出口も少なく、観光地として一歩を譲つている感があるけれども、江戸時代は世間に広く知られていた宿場であつた。
 浅間山麓の追分で、北国街道とわかれた中山道は、和田峠を越えて下諏訪に出る。湖のほど近い温泉に長い旅路の疲れをいやすには好適な桃源郷であつた。宿場として栄え、今もその面影が家々の軒先にうかがわれるのである。