四月二十六日


   蝶の夢書いたは平家物語


       (柳多留一一二)




 たのしそうに蝶が飛んでいる。春を謳歌するように。
 平家の紋は蝶である。一の谷にも、屋島にも、また壇の浦にもひるがえつた平家の赤旗には蝶の紋がつけられてはいなかつた。平家も源氏も同じように蝶の文様を用いたが、格別に深いわけがあるのでもなく、当時流行であつたためで、後年、桓武平家の子孫であることを誇示するために、蝶の紋を平家の代表家紋になつた。
 蝶紋の盛者没落の夢の理を説いた平家物語信濃前司行長の作である。