三月三日

   小笠原流で供へる雛の餅


           (柳多留 九三)




 長野県でも近頃はだんだん月おくれでなくてきよう雛祭りをする所がふえている。
 松本の有名な「押し絵びな」は江戸時代の後期につくられたもので、布地は京都の西陣などからとりよせた豪華なものが多く、顔や着物をたんねんに一枚ずつ張りつける。顔かき、下絵がき、衣裳づくりは分業でおこなわれ、数人が共同製作したといわれる。明治維新後は職を失つた士族のなかにはこの人形づくりを手内職として生活するものもあつた。
 小笠原流とは礼儀作法をいうのだが、小笠原家に長く伝えられたもの。貞宗のとき信濃国の守護役となつて伊那から松本に来た。