二月十日


   五右衛門びつくり権兵衛が足をふみ


             (柳多留 五九)





 いつもヘマばかりやつて肝腎なところで一喝を食わされ、呆々の態で逃げ回るまことにオメデタイ空巣ねらいの親子がある。心気一転、きようこそはと勇気リンリン朝立ちだ。親は貫録を見せたつもりで、子の方を振り返り「オイせがれ、我が家の戸締りはしつかりやつておけよ」
 自分の家を愛する精神は誠にもつて殊勝極まるが、そんなケチなこそ泥とは違い、石川五右衛門はデラツクス。この五右衛門を捕らえたのが小諸城にいた仙石権兵衛。