一月十七日

   信(まこと)ある州(くに)には薄き氷なし

             (柳多留 五六)





 江戸より奉納する句だから信州というべきところを誠ある国と儀礼化している。松本の天白社に額面奉納した句。
 この句のように作家は江戸の地にいて諏訪湖をうたう場合、実際に遊歴した見聞の基礎があつて作つたり、また図絵や道中記や種々の書物によつて想像して作つたことだろう。信濃に関する古川柳にもそうした制約の鑑賞が必要だが、信濃といえば今も昔も変らぬ夢のくに、あこがれのくに、心のふるさとでもあつた。
 この句、諏訪湖の結氷である。