十一月

   ひたばしり老いの便りをいま出そう


   この世との縁の深さの九帳面


   九十われ目立たぬ顔のここに在り


   おんぶしたい顔はせず杖が一本


   生きてゆく道によろよろ笑わない


   健康雑誌未練か渋い顔をする


   おだやかな日はちよこなんと座る


   こだわらぬはからいじっと頭が下がる


   律義めく更にのど仏のおわす


   深閑と有り体のまま締めくくる