九月

   若死にを偲ぶおのれの齢に恥じ


   たましいを吊るいさぎよさ時は縫う


   妻も八十四それぞれの手を揃え


   父よりも母よりも米寿身をこなし


   ささやかな宴連衆の顔たしかめ


   寝小便をしたことなしそれもやせ我慢


   安時計われを好んで咳をする


   ボロボロになつたとしてもひとつの暗示


   死の別れみちすじのキチンと沈め


   明るさと暗さの見事な推理噛む