十月

父よりも母よりも歳重ねつつ

うつせみにあずけてひとり碑を洗う

老い二人山が抱き時も大きく

境涯の砦きびしく温かや

両面の愛が具わるかの珠玉

鮮やかに弔う歌を聴く今ぞ

殉難に川の名忘れぬしのび泣き

眠らばや効かぬ薬のその奥に

愛憎を越えて谷間の風と化し

悠々の河の歴史が練り直し