七月

 七月二十六日は松本空港ジェット化開港で、大阪へは五十五分、札幌と福岡へは一時間三十分、一三四人乗りを利用出来るようになった。
 大阪、札幌福岡空港からは、それぞれ全国各地の空港への連絡もあり、全国一日交通圏の航空も可能で、郷土の発展に大きい期待を掛けることになる。
 ビジネスやレジャーに役立つために、松本空港は信州の空の玄関口にふさわしい基地として発展してゆくのだろう。
 往きに日本アルプスに送られ、還りにまた日本アルプスに迎えられる素晴らしさが心を躍らせ、信州人の気概を奮わずに違いない。
 つい一ヶ月前の六月二十七日深夜、松本市の閑静なところにガス中毒事件がおこり、全国のトップニュースとして報道された。
 地元の者たちは驚きのあまり毎日胸騒ぎし、事件の進展を見守るほかはなかった。
 窓を開けて寝た人で風下に住んでいたばっかりに逝くなり、いたましい有様だった。
 うちで会社の名刺を印刷したなかに、その社員の一人が死亡する不幸に逢い、心から悼んだ、
 本社から応援にやって来た自動車が、どこの支局前にも数台並んでいたし、空にはヘリコプターが翔んだ。
 私の家からは離れているのに、現場のことで聴取に訪ねて来て賑やかだった。新聞社は勿論、週刊誌の記者までが名刺を通じて根掘り葉掘りたずねて閉口した。
 言ったことで名前は出さない約束で、ごく狭い範囲だったが知っていることを明かした。数日した週刊誌を送ってくれたが、差し障りは避けた記事で安心した。ご健闘を祈るとお礼の便りを出した。
 このところ暑さがつづく。松本に転任した人で三年になるが、今年ほど暑い夏はないと話してくれた。東京は三十三度、松本は三十五度、これにはびっくりした。山国で涼しい筈なのにと誰でも思う。
 それに雨らしい雨が降らず、予報で夕方にはにわか雨か、雷ありとあってもさっぱり降らない。
 雨乞いしたおかげでちょっぴり降り、その守り神の頭を撫ぜてやっている写真が新聞に載った。