六月

 新聞の連載漫画で「あっぱれサン」というのがとても面白い。切り抜いて貼ることにした。元日より大晦日まで、またその翌年に続いたから、たまったのを繰り返しくりかえしたのしんだ。
 また週刊誌に載った「すってんころりん劇場」が単行本になったので忘れずに求めた。ナンセンスに富み、ちょっとへまをしても、少し驚かしても、人は善なりで、愛すべき人物として描かれていてそこが気に入った。
 「江戸川柳と一勝負」の著があると聞けば、おろかさに看過するどころか、大いに触手を伸ばさざるを得なくなる。
 この漫画家は秋竜山と言い、相模原市に在住、奇しくも相模原市教育研究所に頼まれ、たてしな研修講座で「川柳の心」を引き受けることになった。
 長野県立科町地籍、蓼科高原のたてしな自然の村は松本から四十分、茅野駅で下車する。六月二日よく晴れていた。
 「江戸川柳と一勝負」の
  ひん抜いた大根で
     道を教へられ
 独特な解説があって漫画が添えられ、ひん抜いた大根で道を教えて貰うが、それで満足せず通り掛かりの両手に物を抱えた女性にたずねると、デカイ足をひょいっと上げる。見事な大根足のシャレ。
 私は説明しながら、ここに居られる女性の先生方は脚線美であられるから、決して大根足であるまいと敬意を表しておいた。
 宮尾しげをは一時代前に活躍した漫画家。旅行好きで
  新聞を見ぬ日嬉しく旅に寝る
の句がある。似顔絵の集いに来ていただき、幾人か揮毫してくれたが、予定があって伊那地方探訪記事を書くため三日留守をした。
 約束の日に松本駅に迎えに行って驚いた。松葉杖を突いている。伊那の先生方の歓迎会で、飲めない酒を強いられ、ほろ酔いの足を囲炉裏へ突っこんだと言う。
 相模原市の先生はかかる失態はあるまいと話したら神妙な顔をなさった。
 川柳の由緒、原爆句、戦争直後の句など、終わりに一句、
  この道はただひとつ
         なにげなく