三月

 春分の日に祖霊祭があって、近くの神社に出掛けるが、前日、ご一緒しましょうとお誘いしてくれた人はお医者さん。この頃さっぱり診て貰わないでいるのでちょっと気が引けたが、ご厚意に甘えて自家用車に乗らせていただいた。
 毎月一回は受診した方がよいと言われるが、つい億劫になって、いつとなく忘れることが多い。丈夫だから気にせぬものだが、それでもちょっと挨拶がてら顔出しした方がよさそうだ。
 若いときは胃腸が弱く難儀したけれど、腸チフスに罹った体験の者は健康になると言われたもの。それでも全然病気したことはないわけでなく、腸チフスの後遺症で中耳炎症にやられ、通院を重ねたもの。それが嵩じて真球腫性に冒され一週間に一度は必ず通院を余儀なくされた。
 診ていただいた耳鼻科で、お父さん、そして息子さんに亘る二代にご厄介を煩わした。いま全治だが、自覚症状があるときは早速行くことにしている。
 数年前、年寄りのものには稀だという気胸に冒され、一ヶ月だけ入院したことがある。
 痔の気のない人はごく僅かだろうの譬え通り痔疾を病んだ。それに脱肛にも悩まされた。幾年にも通い、やっと全治、今はけろりと嘘のよう。
 快食、快眠、快便のトリオに可愛がられて、また快が出るが快適である。
 無芸大食、大食上戸の餅食いのことわざがある。三食とも一膳を貫く。朝抜きはしない。寝る前に口さみしさを感じ、何か菓子を頬張る。そんなところがこの諺通り正直で素直だ。
 近所で朝昼晩と酒をきこしめす同輩がいるが、そんなに豪傑である筈はなく、晩酌一本調子を厳守する。追加せずほろ酔いて格好。
 下戸の建てた蔵はないなんて自己弁護を振り回さず、かといって蓄財タイプにほど遠い。
 完全週休制に気運が乗りつつあるのにも拘わらず、お酒の方は完全就労制を私はたのしんでいる。
 「好色一代男」(兼好が見たらば、命盗人と申すべき婆々あり)とあるが、爺々もあてはまるからそれは私の恥多きにも似る。