十一月

 松本市老人クラブ川柳まつもとの会報は、この十一月号で百六十五号に達する。創刊号当時からの人がいて心強い。誘われて中途で入会した人たちと一緒になり、毎月中旬の日曜日午前九時ころ集まって来る。
 福祉会館とも言えるおぼけ荘の大広場、山辺温泉の地籍だから湯槽が具わる。帰りに一浴してゆく同志もいる。郊外だからここに来るのに、オートバイ・自転車・ハイヤー・自家用車を利用する。
 眺めはよく日本北アルプスを一望出来て、浩然の気を居乍ら養う。
 宿題二題、雑詠を先ず蒐め、席題に取っ組む。お茶とお菓子が供せられ、年寄りだからどのお菓子も歯にやわらかい。
 全部揃ったところで、順々に私が講評する。句の内容にかかわる事物のことで、ちょっとした私なり気の挿話が入る。
 会報には会員が執筆した随想を載せ、それぞれの人生感を披露することで意気軒昂、毎号楽しみな読みものとなる。卒寿を迎えた最年長者の風格が頼もしい。
 川柳山ぐにサークルは毎月下旬の金曜日に松本市中央公民館で開催され午後六時から始まる。
 会報はこの十一月号で百三十八号を数える。殆んど顔触れは変わらない。中年組、活力がある。松本市老人クラブ川柳まつもとと同じように、女性の方が多い。
 宿題二題、雑詠と席題二題をこなす。句が全部集まって私が点検するのだが、その間に各自持ち寄りの食品が配られ、ほっと一息の休憩となる。勢い会話が交わされ、私はそれに耳をかすこともならず披講の句をチェックして倦まない。
 たまたま衝撃的な句に出会い、しばしばためらうことがある。その句を披露してから、土地柄実際あるか知らとみんなに問うと、隠微に明るいのがいて、近所にめかしては夕方どこかへ出張する者がいるが、事実だと言える。
 そうなると図に乗って、陰間茶屋にじわりじわりと深入りし、両道使いの早業にまで異聞を広げ、おどろおどろのひと言がオチの江戸小咄でケリをつける。そして現状に鑑みエイズ対策を論議し合った。
 しかつめらしく講話、ときに余談のほどよさを志す。