十月

 まだ暑中休暇だったが、予定の講義が九月二十六日と決まっていたので、学生たちには特に繰り合わせて集って貰った。でも就職内定の都合があり、出身地での研修があるため聴講出来なかった者もいたが。
 先ず金子呑風を挙げ、そのあと金井有為郎、小宮山雅登の三人の作品を鑑賞することにし、三人三様の句風について解説した。いずれも県内は勿論県外にも注目された作家だったゆえ、心をこめてそのいくつかの川柳を黒板に書いていった。
 愛慕すべき故人であり、その句集の序文を私が頼まれた経緯があるので、俤を偲びながら諄々と説いた。
 その日、時事通信社の取材があり、あまり長くなるようだったから、自宅にまで来ていただいた。
 二十八日には自分の狭い範囲の知己との触れ合いを話題に載せ、それにまつわる自句を披露、実作への奨めをもうながした。
 近い将来、社会に出てから人との接触のうえで、好き記憶の豊かであることを祈っていると結んで私の講義は終わった。
 十月十九日のわが句会に大学生がすすんで出席して下さった。初めてにしてはよく句が抜けた。来月は友人を伴ってくることをお願いした。
 その前、十月三日四日は日独交流シンポジウムがあり、招かれて快く出掛けた。信大人文学部の坂西八郎教授の呼び掛けで、ドイツ俳句協会会員で詩人、画家のイングリット・グレーテンコルト・ズインゲルト女史、同会員で甲南大学のサスキア・石川・フランケ女史、詩人の鈴木俊氏(日本詩人クラブ理事)、信大のドイツ文学の望月一樹教授、俳人の宮坂敏生氏、信大の英文学の飯田実教授。
 フランク女史は日本語流暢、日本語も書け、大津市に住んでいると聞き、川柳作家美濃部貞さんも大津市に住んでいることを話しておいた。
 インゲルト女史の詩訳に対し、川柳、俳句、詩を以て即吟して見せ、その逆も紹介して試みた。
 ドイツに俳句ブームの所産としての出版物をいただいたが、川柳にも関心の深いことがわかる。