四月

 孫娘が在学中、夏期休暇を利用して学校の斡旋で、米国シャトル市の或る家庭に短期留学をしたことがあり、その翌年もお邪魔したが、既知の妹夫妻が日本に遥々やって来た。
 松本駅近くのホテルで一泊したお二人をお連れして、家族一同で歓迎となった。
 座敷の方が日本向きでよいと判断して招じ入れた。ご主人の方は胡座だったが、奥さんはかしこまったつもりで正座。
 名刺にはクローディア・E・エアリック、会社、住所電話の日本活字、裏は外国語。
 家族それぞれにご丁寧なお土産をいただく。私はその場で聞いたら、国立公園カレンダー、思わず「ビフテフル」の一言、すると分かったらしく二人ともニッコリ。
 さて写真を撮りたいらしく、奥さんが立ち上がったが、足がしびれを切らしてフラフラ。大笑い。
 専ら通訳は孫娘で問答をとりさばいてくれる。ご主人は「ありがとう」「どうも」「今日は」だけ覚えたという。
 お昼におすしでもてなしたが、箸使いがうまいのにうっとり。そして近くの松本城に案内し、北アルプスを眺め、そして浮世絵博物館に回った。
 別れはつらいが、みんな機嫌よく微笑をお互い絶やさなかった。
 川柳の話も出たので「川柳しなの」を差し上げた。
 一週間ほどしたら、坂西さんが二人の女性を連れて来た。ドイツ人。座敷に通したが馴れたもので足を伸ばして話す。炬燵だ。通訳は坂西さん。
 草月流師範、エリカ・シュヴアームと住所も日本活字で、裏は外国語。
 日独交流のミニ生花展を松本で聞いての道すがら、俳句にたしなんでいるところから、私を紹介したと言う。
 いま流行の村おこしのおやつを出したらお二人とも苦手らしくムニャムニャ、しかめっ面。
 ドイツでは耳に調べを聴くのが本流らしく、すすめられるままに私は川柳を二句朗詠してあげた。
 いま国際都市として宣言している松本だが、わが家にもその先鞭に恵まれたのだと独りうなずく。