一月

▼冬にしては少し暖かいなと思ったり、凌ぎいい日が続くと朝の散歩に出掛けたいなと思ったりしながら、それでも風邪を引いたら困る、のどの痛みの程度くらい飴玉をなめて我慢ができるが、やはり風邪引きはこわい。
▼元旦になって、新しい年を迎える瑞気に触れたく、家族のものたちと、近くの神社に初詣でして手を合わせ、ただ黙って何も考えぬふりをして祈った。そのあと、小高い丘のお墓に回り、父や母や弟の御霊安かれと合掌。墓石にそそぐ水の滴りが冬の陽に弾くひととき。
▼それから少し登ってアルプス公園。西方の日本アルプスの眺めが素晴らしい。新雪を戴いた山々が鮮やかに迫る。私たちばかりだとおもいきや、大勢押しかけて賑やか。写真を撮る構えをしていたらシャッターを切ってくれる心得た人があって御礼を言う。佳きことあれという気分がそうさせるのだろう。嬉しい。
▼世間並といかないが、まだまだうちの孫は修学中なので、金一封のお年玉を手渡した。頭を下げたの、有り難うとつぶやいたの、黙って笑顔を見せたの、それでいいのさ。
おせち料理にくたびれた頃合い一番大きい孫がバックを持って来て、お年玉の返礼だと言う。「おじいちゃんの履いてる靴があんまり見すぼらしいから」目に余るまでは言い添えなかった。三人で申し合わせのプレゼント。なるほど磨きもせず、爪先あたり綻びて針金でしつらってある不手際さに我慢がならなかったのだ。あまり始末屋も考えものだと頭を下げた。
▼遊学の孫が即席料理の下宿献立のひとつをみんなに振る舞ったがごく普通の誂えものなのに、なかなか箸の運びも繁く忽ちなくなる口あたり。
▼大根を刻んで、それにカイワレ大根を混ぜ合わせ、マヨネーズの簡単な取り組みが舌ざわりよく私たちを喜ばせてくれた。
   大根だね有りは村での能い手也
        柳多留五篇
 青首大根、青味大根、聖護院大根、辛味大根、天安紅心大根、桜島大根、守口大根など、この村の能筆の種はどれか。