一月

▼夕飯がすむと大抵七時半、ニュースのあと丁度手頃の(連想ゲーム)に家族一同でうつつを抜かすことになる。間もなく終わりそうな時分、私ひとり居間に移る。
▼居残した仕事を片付けたり、読みさしの雑誌にまた目を通したりしていると、妻が入って来る。勝手元の整理を手伝ったりするから九時。その八時から九時まで好きで観ることの出来ないドラマの展開を口惜しがる。途端にスイッチが入る。私も余儀なく押しつけられたかたちで目をやるが、気にいらぬと蒲団にもぐりこむ。
▼土曜日の夜が待ち遠しい。十時十五分から(ヤングママ子育て相談)が始まる。レシーバーをつけて寝たままで聴くたのしさ。夜泣きはどうしたらよいか、左利きが気になるけれど心構えはどうかなど、多種多彩の質問が電話で交され、誠に丁寧に噛んでふくめるような親切な答えかたに心が躍る。実に親身を湛えた指導、助言が耳に残り、寢ごこちをそそる。
▼日曜日の同じ時間に(真打ち競演)は、落語、漫才、物真似、何々ボーイズといった顔触れ。東京と決まらず、鳥取とか佐賀とか地方出演もありローカル色が濃い。くすくすひとり笑いして蒲団のなかで身をくねらす。落語もうまくオチで終演となるが、こちらも寢る時間を誘われぐっと脚を伸ばす。
▼いつだったか(権兵衛狸)が演し物で堪能させてくれた。毎晩ドンドン戸を叩いて「権兵衛、権兵衛」と呼ぶいたずら狸の咄だが剽軽なところがあって憎めない。タモリの(ウオッチング)で生態を紹介していたが、横須賀や逗子あたりの民家の庭に出て来て、人なつっこいところがある。冬籠りするときもみんな協調的で、食物貯蔵にこと欠かぬ。狐はひとり占めして他を追い散らすという。
▼高橋勝利「性に関する説話集」は栃木県芳賀郡の土地柄から産まれたものだが、そのなかに若い娘に化けた狐が炭焼きの山小屋にやってきて、火あたりしていい気持ちになり、欠伸したと思ったら、それがホトだったというはなし。狸が宿を乞いに来たが、八畳敷きの代物を持っていては引受けられぬというと、「女狸」の答え。これは江戸小咄。野放図と鷹揚さ。