二月

▼長寿のひとがよくこう言う。これまでになったのは、無理をせずなすがままに自在の境地を遊ぶ日常であるからだと。いつまで生きるか、それは思わない。決まった限界があるわけでなく、与えられた齢の悠々たる本願に徹するのみともつぶやく。
▼まだ老眼鏡の厄介にならない頑強とは違って、目がショボショボそのうえ鼻汁が垂れる始末。案外こだわらないで、歩けるまで歩こうと、日光に浴しながらせっせと知り合いを訪ねたりするようだ。
▼本誌は十一月号で五〇〇号を数え、ここまで到達した感慨にひたったことはたしかだが、それより大勢の方々の支援にあずかった感謝の念がより深い。特集には勿論のこと、常日頃ご投稿ご寄稿下さる方々のご配意によって、今日まで続いた幾十年は、ある意味で夢のようである。俳誌「ふもと」近刊号、内山一草君が
 雑誌「川柳しなの」五百号を祝ふ
  ひたむきに生くる男あり
          去年今年
と祝吟している。その顔を浮かべ長い交友をふりかえった。
▼昨年五月、大阪の浪速書林で特輯川柳関係の古書目録のなかで、「川柳しなの」創刊号から一括した売りが出た。よく揃えていてくれたものとその篤志に敬意を表した。うちで発行した母袋未知庵の「川柳善光寺物語」や「川柳信濃国」、尾崎久弥の「信濃小説集」、向山雅重の「泥鰌汁」、胡桃沢友男の「信濃年中行事を尋ねて」などはちょいちょい古書目録に出たが、雑誌としては初めてで、その評価が一応示され、何か知ら存在感を知らされた思いである。
▼川柳に関心を持っていただきたく、ささやかな地方柳誌を名士に献呈することを思い立ち、のち末弘巌太郎の随筆に拙誌が出て嬉しかった。最近では谷沢永一氏がしばしば諸誌に紹介して下さった。南博、永井啓夫小沢昭一編「芸双書」のうちで拙誌にふれている。
▼ご寄稿下さった内容が単行本になると、それを送って下さるものに潁原退蔵著作集、中村幸彦著述集、小池章太郎さんらが並ぶ。