八月

   旅すすめられ膝元の山すがた


   誰にとも聞かすほどなく弱まり来


   恥多き身ひとつ時を惜しまねば


   思い知る朝の目覚めのうす明かり


   払えずに群がる虫がもついのち


   べっとりと初戦明暗高い窓


   なぐさめの言葉不足のすれ違い


   終戦の痛みの蝉をまた鳴かす


   選ぶほかなき道いつか描かしめ


   抜け駆けの台風便の律儀めく