十月

   幕合いに呼ぶ人の名を思いやり


   落語家の江戸の名残りを抱いている


   たたかいのもう来ない日を眠るなり


   残りものやや衰えを見ているか


   尾羽打ち枯れしおもいのもたれよう


   にせものとほど遠し小さく生ま身


   古池に帰郷ここらで月映す


   小書斎の扁額ややに広がる


   老いの稼ぎ雨が静かに降るまた降る


   物音に朝の寝覚めを合わせゆく