九月

   にせものとほど遠く小さくもなま身


   逆縁の土を濡らしに雨本気


   夜盗挙げて昼寝重たく闇が甘い


   虫の音の休らいながら問いもする


   遠い過去がまっすぐに来て手を握り


   ふらふらと寝にゆくほんとうの足だ


   長い鉛筆がころがっていて枕する


   音をひそめ虫は痛みがわかるほど


   継ぐべきもののために骨もかろきや


   悪が投げてくる身をかわす修羅場