八月

   机辺拭くわが名小さくつぶやく


   さはあれど避暑地にのがれ襟を正し


   物憂くも古き語りのもたれ合い


   凍傷の山の記憶の深く重く


   冷静を整う月がのっと出た


   ハタタコに洗われし身ののがれ得ず


   差し換えの活字が思い鞭となる


   さらでだに深き痛みを問い返し


   あやまちを拭う手際の負い目とし


   王道のかくもきらめき目を閉じる