十一月

   おのが身に尽くす日のあり老夫婦


   こそばゆく何やらひとりだけのみち


   身に蔭るなくさらさらと通り雨


   手短かに話す風景もそのなかに


   貰われてゆく菊の香のあたりよさ


   うらばなし生きて見つけた曲がり角


   間を持たせながら去る身と気付かせる


   天命を口にしてやや不遜なり


   生きて詠うこの長々とした五体


   戻れない旅のすがたを思いやり