十月

△毎日というほど川柳雑誌が送られて来る。ページ数の豊富なのや句会報のような薄いのもある。それぞれ特徴を持っている。句だけで実作本位のもの、中間読み物が顔をのぞかせるもの、利いた評論で光るもの、古句研究の輪講で江戸風俗を伝えてくれるもの、ほんとうに一生懸命で川柳のため社会進出を志していることがわかる。
△大は大なり、小は小なりの使命に燃えて、地固めに努めながら、川柳はかくあるべしと主張をかかげることを忘れない。北海道から九州から、日本の隅々に行き亘って、その土地のカラーをにじませまた風景をからめて編集に意を注いで力強い。
△同人がズラリと並んで作品を掲げ、誌友が目白押しに句を競っている壮観は、読むものに作句意慾を駆り立て、意識覚醒をさそうかのようである。何かを求め、何かを捜し、おのれのうたごころに発止と照射しようとするとき、或いは試行錯誤であっても、時代感覚をとらえたい意慾に燃えて、川柳の持てる視野の広からんことを目指すことになる。
△私はこうして送られる僚誌を大事にし、いつか資料になり参考になる将来のことを信じて、うず高く積み重ね手放そうとはしない。先年、家屋を改造することになり、若干図書館に寄贈した。私が川柳に手を初めた昭和五年頃がせいぜい古い方で、段ボールに詰め込み梱包したら、これほど大荷物になろうとは予想しなかった。トラックを駆って納入をすませた。
△地元の新聞が報道してくれ、反響もあって友人から電話があり、よかった、よかった、無駄にしなくてよかったと、一緒になって喜んでくれた。もともと廃品回収といった向きに出そうとは考えていなかったし、それでは自分の気持ちに背くことになる。
△みんな一生懸命なのだ。コツコツと真面目に出している雑誌のことを思うと無下に出来ない。自分の手元になくても、図書館に現存していることで安心し、いつでもそこへ行けば、もとの所蔵者として対面が出来る。
△先日もちょっと調べたく閲覧を乞うたら、どうぞといって掌に渡され、なんと久闊を叙した。