九月

   気遣って戻るうしろを月濡らす


   耳打ちのあどけなさ陽もまたゆるく


   恩情におののく小さき灯を見たり


   新しい秋に乗っかる老いの艶


   拭き終らないからだ明日に持ち越し


   連れ立ってさても別れがつきまとい


   としの差のへだたり理屈なく覚める


   しのび寄る老いのたしかな道しるべ


   思い立つ旅のゆくえを知らぬなり


   熟年のしずくしたたか落ちるのみ