一月

△馬齢を加えるというと、ちょっと体裁がいいが、へりくだってるみたいにカッコウつけているからかも知れない。またひとつ齢をとって申しわけないナンテいう人はいるが、ナゼひとつとらせたんだと怒る人もある。年齢延長の生理的趨勢にプリプリなようだ。
△孫たちもひとつ齢をとった。まさか馬齢を加えたとは言わぬ。そんな言葉は知らず、寝て起きたらみんなに「おめでとう」と呼びかけられて嬉しがっている。
△世間でお年玉のことをチラチラ聞いてどう処置しようかと思っていた私たちだったが、ご当人たちはひとことも吐かず、知らん顔。育ちがいいだとか、親たちのヤリクリの仕末を見ているから察しているんだとも思えない。率直にいえばそれほど関心があるわけでもない。仕合わせ者だ。
△新聞に載っていたが
   叔父さんがランクをつける
        お年玉   阿久治廉治
 年長者に意見を訊いてきめるという手である。
   お年玉すえ置く不合理
        子に突かれ   中村豊太郎
 賃上げ交渉経過を知っているから、お年玉もそれにナラエというのである。タジタジの体。
 そうしてこうなる。
   重きより軽きが好かれる
        お年玉   門脇雲山
△とても第三句目を孫たちに篤と解説したトタンに、飛んだことになりかねないから差し控えたが、幼稚園に行かぬのは知らず、小学校に行ってるのは軽い方が嬉しいに違いないからいっそおかしい。
△本誌表紙絵を飾る画は孫のうちの二番目で小学校二年生。教科書よりも漫画や科学絵物語が好き。ときに応じて刷り損じのB4判の紙に即妙自在のぬたくりを試みている。表紙絵のひとつが季刊「信濃路」に見つかり、見出しもチト大ゲサだが、
 ピカソ?その名は、まさかつ君
△知らないでいたら毎日小学生新聞に彼の「松本城」が出ていたり、つい最近長野放送テレビで「ヒマワリと子供」が入選放映された。彼にとってこれは何よりのお年玉だ。ほかのふたりの孫は何ともお年玉を要求して来ない。
沈黙――これがチトこわい。