一月

△伜が急に脚が痛くなりだしたが本人もそうだが、ハタの目もハラハラするだけでどうにもならないし、元旦早々と来ているから、先ず緊急医に診て貰うことにしてハイヤーで駆け付けたが、専門医でないのか原因がトントわからず、レントゲンをとってくれ、とりあえず塗り薬を頒けてくれた。
△四日になって整形外科がいいだろうと行ったら、骨に石灰が発生したという。この石灰がだんだんなくなると、痛みもケロリッと消えてゆく。不思議なほどテキメンだという話だった。安心だか、気休めだか。結晶誘起性石灰化腱炎という。
△毎日通院、痛みが漸くうすれるに従って、日を置いて診ていただいている。小康を得た十五日夜半縁日で毎年行く連中とお寺へ厄除けにお詣りに出掛けた。脚の痛みがよくなることの祈願とも私たちは思ったが、本人はそれを願ったかどうか知らない。
△戻って来てお土産はチリ払いだった。紙でできた白の、さきっぽに赤が塗られている。とても軽く厄払いのつもり。早速、小学校五年生になる孫がみんなの頭を払ってくれる。それぞれ何かを唱えるのである。私のところに来て何を言うかと思ったら「禿ゲ禿ゲ伸ビロ伸ビロ」でみんなを笑わせた。
△少し景気をつけようやと、お勝手元でその夜、五目飯をこしらえて、伜を鼓舞する按配になった。ご飯になっても、みんなに逆らうように、漫画本を読んでいる小学校一年生の孫は手古ずらせる。せきたてればせきたてるほど、ウスウス笑みをたたえて知らん顔。今夜はお父さんを元気づけるのだよと言われ、シブシブ箸をとったが何を思ったか、スッと立って割箸を要求した。
△四角い紙に何やら書いて、それを割箸にセロテープで取りつけていた。出来たのをご飯のうえに立てて、それもまんなかより少しはずれた個所。小さな旗である。シテヤッタリとばかり、モグモグ飯を頬張っている。得意気なのが、いじらしい。
△それを見ていた四才の孫が「オラもやる、オラもやる」と勢いづいて真似たがる。女の癖にオラとは、これは現代ッ子ボケらしい。