六月

   生きた言葉が返ってくる目を覚ます


   みんな他人と思った日枕よごれて


   求めゆくものありて誰も話さず


   一介の町人といういまも哀しや


   男の腕もまたやわらかく生きにあえぎ


   肌のあとのおかしさを噛み老いの坂


   いたずらな眸が生半可暑い夏


   黙っててほしいむなしさだけ流れ


   果てのむこうを読もうとするはしたなや


   ぽっかり浮んだ雲その時聞かず