六月

 山にちらばる小さな湖
やまびこのたえてなき日を映すなり

若き日を辿る杖両手が置かれ

人生のいとなみ山を描く帽子

戦火をよそに倖せの影が重なる

人待ち顔の夏の妖しき湖に抱かれ

暮れなずむ山の雨ひと登り来るか

ものをこそ想え山はかまえる

冬ひつそりと忘れられ山の真珠

山にのがれるいやしさよ湖どれも光り

湖をめぐるひとに会うわれこそばゆき