十一月

   いじらしく土偶の乳房語るらく


   髭伸びて政治の憎さ眠くなる


   剃刀の刃のいらだちを磨き上げ


   ひとり飲む酒のおろかさゆだねたり


   柿熟す拙なきまでに分別よ


   齢を得し日の薬たり小粒てのひら


   金策の夕陽を遠く描きたがり


   かなしみの涙ではない老いを拭く


   石据わる頑くなに世を拒みたく


     文化の日松本市より芸術文化賞受賞

   黄菊白菊この佳びの句に寝覚め