十二月

▽私たちが心をこめて詠い上げている川柳の渕源はどうなのだろうという思惑から考えても、「柳多留初篇輪講」の始まつたことは、何か私たちを益することになると思う。その評釈も前句の判明しなかつた頃と違い、あきらかになつている句もある現在、新しい視野に起つて一新する事はたしかだ。
輪講者の顔触れのなかに現代川柳作家がもう少し含まれていたらという希望を持つた人たちもかなり多かろう。その希望も徐々にとりあげられることを願つている。じつくりかまえて研究している隠れた人があるかも知れない。埋もれさせたくはない。
▽礎稿の大村沙華氏は大村繁、東京貿易通信社長、社団法人自由人権協会監事、財団法人法律扶助協会評議員といういかめしい肩書きがある。人間的に世話好きだ。
▽富士野鞍馬氏は川柳番傘同人、「川柳鞍馬集」「人生譜」の著があり、川柳画をよくすることでひろくお馴染みのひと。
▽山路閑古氏は荻原時夫、共立女子大学教授、理科専攻、「吾妻鏡史話」「木葉髪記」「史篇四顆」「戦災記」「土星空豆」「川柳歳時記」「羅馬の休日」の著があり、また風流大学教授のゆとりを持つ。
▽比企蝉人氏は比企修、東京学芸大学教授、理科選考、「日本小話集」(宮尾しげを共著)「川柳小咄集」「化学ノート」の著あり、山路閑古氏と無二の学友。先年学生たちを連れて入信、浅間温泉に来たとき家に寄つて戴いた。
▽浜田桐舎氏は浜田義一郎東洋大学教授、「蜀山人」「狂歌川柳」(岩波日本文学史講座)「川柳狂歌集」(岩波日本古典文学大系、杉本長重共著)「狂歌集」(筑摩古典日本文学全集)「につぽん小咄大全」(筑摩世界ユーモア文学全集別巻)を著している。浜田さんに誘われ、東京教育大学教授吉田精一氏、山沢英雄氏らと新宿で飲んだことがある。
▽杉本柳汀氏は川崎市立橘高等学校長、前掲「川柳狂歌集」共著。
▽山沢英雄氏は三菱日本重工業東京車輌製作所三菱東京病院川崎診療所長、「柳多留」五冊(岩波文庫)の著書あり、スキーに堪能。
▽田中蘭子氏は桜印レンズ工業株式会社取締役社長。